金融リテラシー 教育 講師 セカンドライフ 老人ホーム FP ファイナンシャルプランナー 新宿
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FPいわかみ

お役立ちコラム

前払賃料の「償却」とは?

民間施設の高齢者住宅で、費用についての説明を受けると「償却」という言葉がよく出てきます。この「償却」ですが、「説明を聞いても、どういうことなのかよく分からない」という声をよく聞きます。場合によっては、何千万円にもなる入居費用に関することですので、正しく理解しておく必要があります。

  

民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅では、賃料(部屋の家賃)について、「一括支払方式」「月払方式」を選択できるのが一般的です。

 

▮一括支払方式

 

「一括支払方式」は、終身にわたる賃料を入居時に全額まとめて支払う方式です。終身といっても、寿命は分かりませんから、入居時の年齢に応じて「想定居住年数」を各施設が独自に決めていて、その年数分をまとめて支払いことになります

 

例えば、80歳で入居した場合の想定居住年数を13年と設定している施設であれば、月額賃料10万円の部屋に入居するとすると、10万円x12か月x13年=1,560万円を一括で前払いすることになります。

 

13年を過ぎて引き続き入居している場合は、追加で賃料を払う必要はありません。つまり、一括で1,560万円を払えば、何歳まで入居していたとしても追加賃料は発生しません。(もちろん、管理費や食費等の毎月の費用は払い続ける必要があります)

 

 

▮月払方式

 

「月払方式」場合は、入居時の一括払いがない代わりに、月額の賃料10万円を毎月払っていきます。想定居住年数という考え方は適用されませんので、住んでいる限りは何歳になっても毎月払い続ける必要があります。普通の賃貸マンションを借りるのと同じです。

 


▮償却

 

「償却」は、「一括支払方式」に関連してきます。

先ほどの例で、80歳で入居して想定居住年数13年分の1,560万円を一括支払したものの、残念ながら85歳で死亡により部屋を返却し契約解除となるケースを考えます(ちょうど5年間居住したとする)。この場合、13年のうち部屋が返却された後の8年間分についての賃料は当然返還(遺族に対して)されますが、1,560万円が単純に期間按分されるわけではありません。

 

入居した時点で、1,560万円の定割合が返還対象外となり、これを「償却」といいます。一定割合は、施設によって異なりますが、15%~30%が多いです(「償却率」といいます)。

 

先ほどの例が20%の施設だとすると、入居した時点で1,560万円x20%=312万円が「償却」され、返還対象となる前払賃料は1,560-312=1,248万円となります。まる5年経過後の85歳で契約解除となった場合は、1,248x(8/13)=768万円が返還されることになります。


▮どちらの方式がお得?

 

「一括支払方式」・「月払方式」、ぞれぞれメリット・デメリットがあります。

 

「一括支払方式」では、想定居住年数を過ぎても追加で賃料支払いが発生しないため、長生きした場合の費用負担が軽減されます。管理・サービス費や食費は払い続ける必要ありますが、一番金額の大きい賃料の毎月の支払いが不要になるので、年金収入があれば何歳まででも不安なく暮らせる可能性が高くなります。一方で、想定居住年数より早く契約解除となる場合は、入居時に「償却」が発生するので、「月払方式」に比べて高くつくことになります。

 

「月払方式」では、長生きした場合の資金計画が問題になります。資産取り崩して賃料を毎月支払っている場合は、いつまで資産がもつのかという心配が出てきます。一方で、「償却」がないので、想定よりも早く解約する場合でも、デメリットは出ません。

 

 

▮「一括支払方式」が安心

 

「長生き=リスク」と考えるのは辛いものがあります。

寿命は誰にもわかりません。長生きすることを不安に感じないためには、出来れば「一括支払方式」がよいと思います。もし、必要な一括支払額に資金不足であれば、もう少し資金負担の軽い施設に変更を検討するのがよいと考えます。